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国内: 国内

分野: エネルギー

製品: Gurobi Optimizer

現在世界規模で、太陽光発電(PV: Photovoltaics)システムや風力発電をはじめとする再生可能エネルギーの利用拡大が期待されており、日本でも高い導入目標が掲げられています。特に東日本大震災の発生以来、脱原子力発電の流れの中で再生可能エネルギーの導入が注目されています。しかし、PVシステムや風力発電の発電特性は、季節や時刻による規則的な変動に加え、天候の変化による不規則な変動を有するため、現状と同程度の安定した電力供給を実現しながら再生可能エネルギーの大量導入を行うためには、配電系統の電圧変動や周波数変動の問題、需給バランス制御の困難化など、様々な技術的課題を解決する必要があります。
社会コスト最小化の観点から、電力システム側における蓄電システム等に加えて、住宅やオフィスビルの需要機器の運転制御による追加的な需給バランス調整力の確保が、今後必要になってきます。東京大学 エネルギー工学連携研究センター 荻本研究室では、電力システム全体の需給バランス調整に貢献できる分散エネルギーマネジメントシステム構築に向けての研究を、最適化技術を活用して行っています。

 

図1:集中/分散エネルギー・マネジメントの協調

 

図1は、私たちの研究グループが想定している「集中/分散エネルギーマネジメントの協調」を示した図です。電力会社における集中エネルギーマネジメントでは、供給地域全体のPV発電量や電力需要量を予測して、最適負荷配分(どの時間帯にどの発電機を運転するか)を決定します。電力会社が制御可能な設備のみでは需給バランス調整力が不足する場合には、需要家に対して電力需要を調整してもらうための情報をあらかじめ送信します。例えば需要を増加させたい場合には安い電力価格を、減少させたい場合には高い電力価格を前日に提示するなどの方法が考えられます。一方、分散エネルギーマネジメントは、電力会社から送られてくる翌日の電力価格などの情報や、電力・給湯の需要量予測、その地点における翌日のPV発電量予測などを基に、住・働環境の快適性を損なわない範囲で、翌日の最も経済的な(電気料金の安い)機器の運転計画を行います。住宅やオフィスビルにおける分散エネルギーマネジメントによる局所的な最適化と、電力会社が行う集中エネルギーマネジメントによる地域全体の最適化を協調して運用することにより、需要家や電力会社が共にメリットを享受できるシステムを目指しています。

図2:家庭内の対象機器とエネルギーフロー

図3:変動する電力料金によるヒートポンプ給湯機の最適運転

荻本研究室では、翌日のエネルギーサービス需要量や、PV発電量の予測値に加え、電力会社からの需要調整インセンティブ情報によって、家庭内機器が最適に運転された場合の効果を定量的に評価するために、Gurobi Optimizerの混合整数線形計画法(MILP)の機能を用い家庭内機器最適運転計画モデルの開発を行いました。(図2参照)実際の戸建て住宅のデータをモデルに適用した結果、需給バランス調整が最も困難となる5月の晴天時において、昼間の電力料金を安く設定することにより、家庭内のヒートポンプ給湯機や蓄電池によって昼間の電力需要が創り出され、PVからの余剰電力を消費して逆潮流量を抑制できる事も分かりました(図3参照)。また天候に応じた適切な電力価格設定により、需給バランスの調整力として家庭の電力需要を利用できることも確認できました。

 

Gurobi Optimizer 採用にあたって

東京大学 エネルギー工学連携研究センター 荻本研究室 特任助教 博士(工学) 池上 貴志氏

これまで研究には、他の数理計画ソルバーを使用していましたが、知り合いの研究者の紹介により、2010年よりGurobi Optimizerの使用を開始しました。私の研究はエネルギー分野の研究であり最適化の研究ではないため、新しいツール(ソルバー)を研究に導入する際には、いかに早く適用できるかが課題でした。Gurobi Optimizerは導入時に特に難しい設定もなく、短時間で使いこなす事ができました。分散エネルギーマネジメントの最適化計算では、単なる線形問題(LP)でなく混合整数線形計画(MILP)問題を高速に解く事が要求されます。Gurobi Optimizerのおかげで、MILP問題を高速に解く事ができるようになり研究効率が大幅に改善されました。
現状でもGurobi Optimizerは、MILP問題を高速に解くことができていますが、今後更なる高速化、そしてコンパクト化を期待しています。大規模なMILP問題を実運用に耐えうるスピードで瞬時に解けること、それが、実用化に向けての第一歩になります。
Gurobi Optimizerの高速性により、最適化技術が、エネルギー問題解決の手助けとなると確信しています。

東京大学 エネルギー工学連携研究センター 荻本研究室のWebサイト:
http://www.ogimotolab.iis.u-tokyo.ac.jp/

 

国立大学法人 東京大学 エネルギー工学連携研究センター 荻本研究室

エネルギー工学連携研究センターは、エネルギーに関わる教育研究の部局横断的なネットワークとして、2008年1月1日に東京大学内の生産技術研究所と工学系研究科とが共同で設立した研究センターです。次世代を担う総合的人材の育成に取り組むことを視野に入れ、エネルギーに関わる現代的課題の発掘と、その解決のためのシンクタンクの役割を果たし、エネルギー関連分野における教育研究の国際的な核の形成に資することを目的として設立されました。エネルギーマテリアル分野、エネルギーシステム分野およびエネルギープロセス分野の3つの研究部門から構成されています。
この中で荻本研究室では、「エネルギー戦略」、「長期物質・エネルギー需給解析・評価」、「動的エネルギー需給解析・評価」、「エネルギーマネジメントと再生可能エネルギー」の研究を行っています。特に、「エネルギーマネジメントと再生可能エネルギー」の分野では、今後導入が期待される再生可能エネルギーの有効利用に関する研究を行っています。再生可能エネルギーは出力が変動するという特性を持つため、大量導入に伴う様々な問題が課題となっています。再生可能エネルギーの大量導入を可能とする電力需要の能動化を目指し、需要側のエネルギー技術の最適構成、最適制御、集中/分散エネルギーマネジメントの協調制御・運用の研究を行っています。

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