国内: 海外
分野: その他
製品: Gurobi Optimizer
プロジェクトポートフォリオの最適化は、求解が極めて困難な問題です。この問題は、十分でない制限された有効リソース内でプロジェクトを選択して、最適にスケジューリングするための天文学的な数の組み合わせがあります。
さらに、ポートフォリオの作成にあたっては考慮すべき相反する事業目標があり、その結果、相反する目標間の妥協点を最適化する必要も出てきます。
従来からポートフォリオの「最適化」は、まさしく手作業で行う時間がかかる作業であり、一般的には、プロジェクトやプロセスに無駄や遅れが発生する次善の最適化の結果がでてきます。
組織再編前のヒューレット・パッカード(HP)のGlobal IT部門では、この作業に、プロジェクトポートフォリオマネジメント(PPM)というHPのソフトウェアツールと表計算ソフトのデータを使用していました。関連する何百ものプロジェクトが連鎖的に依存している状態でリソースの複数要件を伴いながら、ものすごく複雑に絡み合っているため、多くの有望なポートフォリオシナリオが見過ごされていました。
グローバルなIT組織では一般的に、プロジェクトマネジメント協会(PMI)のガイドラインに沿って、次の会計年度のITプロジェクトのポートフォリオを3カ月前に作成しています(下図参照)。
このプロセスは次のようなステップを踏んで進められます。
HP Global ITは、ITプロジェクトポートフォリオの作成に必要なデータの取得に2つのツールを使用していました。ビジネスバリュープロポジション(BVP)は、利益予測、KPI、人件費以外のコスト、優先事項等を取得するツールで、プロジェクポートフォリオマネジメント(PPM)は、ITプロジェクトのID、名称、プロジェクト期間の見積もり、プロジェクトスポンサー、プロジェクトが支援する投資分野、人件費、人員配置のプロファイルを取得するツールです。
ITプロジェクトのポートフォリオを生成するには、検討を要する領域が多岐にわたるため、難しい挑戦でした。IT組織、投資分野、エグゼクティブスポンサーが、それぞれ複数あり、ITアプリケーションは何千にもおよび、ITアプリケーションとITプロジェクト間も「多対多」の関係があります。
会社の事業戦略に沿った複数の目標もありました。これらの事業目標には、総合的なプロジェクトランキングの最大化、総合的なプロジェクトスコアの最大化、総合的なプロジェクト利益(直接的または間接的)の最大化、特定された事業目標(顧客満足、戦略的整合性、技術的整合性、能力ロードマップ、従業員満足、法令/規制/監査等)に関する総合的なプロジェクトスコアの最大化などです。最終的なITプロジェクトポートフォリオは、CEOと執行委員会に承認されましたが、これらの意思決定者の利害は幾度となく対立しました。また、ITプロジェクトポートフォリオの作成は年1回でしたが、手作業によるプロセスがきわめて非効率的であるのはあきらかで、出来上がったポートフォリオがビジネスルールやプロジェクトの優先順位制約に違反するため、実行不能になることもたびたび発生しました。さらに、事業要件や労働能力の変化に伴う不確実性により、ITプロジェクトポートフォリオが、非常に短期間で使いものにならなくなってしまうこともありました。
解決すべき問題は、リソースの制約(例:労働能力、予算)とその他の事業上の制約(例:プロジェクト優先順位制約)を考慮しながら、その間にある最適な妥協点を得るために、ITプロジェクトポートフォリオの選択とスケジューリングをどのように最適化すればよいか、ということでした。
ITプロジェクトポートフォリオの作成と維持管理の際の複雑な計算をするプロセスを自動化するために、プロジェクポートフォリオオプティマイゼーション(PPO)という意思決定支援ツールが構築されました。PPOツールは、ITビジネス環境の不確実性と継続的な変動に対応するための「what-if分析」機能を提供し、これによって事業・ITプランナーは、様々な事業目標の妥協点を最適化し、リソースとビジネス制約を満たすプロジェクトポートフォリオを形づくることができました。
PPOモデルの主要な決定変数は、ポートフォリオに含めるITプロジェクトの選択および選択されたプロジェクトの開始時期でした。PPOモデルへの入力データは、BVPツールとPPMツールから取得します。PPOモデルは、単一の事業目標の最大化の課題を処理することも、辞書編纂(階層)法を用いて複数の事業目標を持つ課題を処理することもできました。PPOツールの主要なアウトプットは、図2を参照してください。
PPOツールによるガントチャートと最適なポートフォリオの予算消化状況
一言で言えば、PROモデルは、以下の制約を満たすプロジェクトポートフォリオの事業価値の最大化であると言えます。
PPOツールは、HPのCloudで実行され、役割や能力が様々に異なる多くのユーザの同時アクセスをサポートしました。このツールには、定義されたビジネスルールに基づき、PPOデータを頻繁に更新するステージング領域データベースがありました。PPOの前処理部分は、データセットを全てロードするのではなく増分されたデータのみの更新を実行し、ステージング領域データベース内の新しい情報の管理をしていました。PPOツールには、多数のGurobiサーバの使用が可能で、これにより複数のシナリオを同時に解くことができる最適化シナリオのキューマネージャがありました。
HP Global ITは、PPOツールで2015事業年度のITプロジェクトポートフォリオを作成しました。PPOツールは、戦略的整合性と実行能力を確保しつつ、ポートフォリオのコストの24%で90%のポートフォリオ利益を生み出しました。
前述した手作業のプロセスとPPOツールを比較すると、手作業で作成されたポートフォリオに対してPPOツールが構築したポートフォリオは、HPに1億ドルの経済的利益をもたらしました。
2016年に、PPOテクノロジーはHPのSW PPM R&Dチームに移管されました。
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